50代フリーランス、仕事が減った本当の理由
正直に書くと、広告や出版まわりの制作の仕事は、新規の依頼がほぼない。
今動いているのは、ほとんどが紹介だ。以前一緒に仕事をした人が誰かに話してくれて、そこから連絡が来る。この形だけが残っている。
同じような状況の人は、少なくないと思う。そして多くの人が、自分の側に原因を探すのではないだろうか。営業が足りない、SNSをやっていない、年齢のせいかもしれない。自分もそう考えた時期があった。
結論を先に書いておく
腕の問題ではない。仕事の出どころが、まるごと入れ替わったのだ。
これに気づいてから、考え方が変わった。自分を責める話ではなく、構造を見る話だったからだ。
電車に乗ると、それがはっきり見える
いちばん実感するのは、机の前ではない。電車に乗っているとき、街を歩いているときだ。
車内のポスター広告が、ほとんど消えた。今は動画の配信が主流になっている。駅のポスターもあることはあるが、以前とは比べようもなく控えめだ。
そして、残っているものをよく見ると気づく。目立つのは外国のブランドや企業のものばかりなのである。
これは、国内の広告主が紙から降りたということだ。20年前、広告業界が盛んだった頃は、紙の広告があるだけ制作の仕事があった。何かしら動いていたのだ。その器がなくなれば、中身を作る仕事の発注も減る。考えてみれば当たり前の話だった。
雑誌からSNSへ。アナログからデジタルへ。移行の話は何年も前から聞いていたが、こうして車内を見渡すと、もう完了しているのだとわかる。
もうひとつ、静かに進んでいたこと
自分に仕事をくれていた人たちは、自分より上の世代だ。
その人たちが、ぼちぼち引退の時期に入っている。悪いことは何も起きていない。順番が来ただけだ。ただ結果として、発注する側の名簿が空いていくことになる。
業界の縮小と、発注者の引退。この2つが同時に進んだ。片方だけなら耐えられたかもしれないが、重なると効く。
AIについては、予測として書く
ここは正直に、自分の読みとして書いておきたい。
AIの進化は、驚くほどのスピードだ。こうした制作の仕事そのものが減っていく流れは、これから強まるだろうと思っている。Web制作やデザインも、同じ道をたどるのではないだろうか。
ただ、これはまだ自分の実感の域を出ない。「AIに案件を取られた」という具体的な場面を、まだ経験していないからだ。だから断定はしない。
それでも、備えておく話としては十分だと思う。技術で食べている部分は、いずれ値段が下がる。この前提で考えるようにしている。
10年ぶりに、連絡が来た
暗い話ばかりではない。
最近、10年ほど前に一度仕事をした人から連絡があった。覚えていてくれたのだ。こういうことが起きると、続けてきた意味があったと思える。
ただ、冷静に考えると、思い出してもらえなければ何も起きなかった。あの連絡は、その人の記憶の中に自分が残っていたという偶然に支えられている。
紹介の仕事も、構造は同じだ。紹介してくれる人がいる限り続くが、その人がいなくなれば同時に途絶える。今まさに、それが起きているところなのだ。
紹介はありがたい導線だ。ただ、それしかない状態は、思っているより脆い。自分はここを見誤っていた。
必要なのは、見つけてもらえる場所
では何をするか。出した答えは、地味なものだった。
自分の名前や仕事の内容で検索されたときに、たどり着ける場所を1つ持っておく。それだけである。
考えてみると、自分にはそれがなかった。名刺は渡していた。人に会えば話もできる。ただ、その場にいないときに自分を説明してくれるものが、何もなかったのだ。
紹介してくれた人が「こういう人がいるよ」と伝えてくれる。相手が名前で調べる。そこで何も出てこなければ、話はそこで止まってしまう。逆に、仕事の内容と実績と連絡先が並んだページが1枚あれば、それだけで先に進む。
大がかりなサイトは要らない。必要なことが書かれた1枚のページで十分だ。自分でも、複雑なものを作って更新できずに放置した経験がある。だから実感を持って言える。
そして先ほどのAIの話にもつながる。作る技術の値段が下がっていくなら、差がつくのは「見つけてもらえるかどうか」の側だろう。腕のある人が埋もれて、窓口を持っている人に仕事が行く。そういう時代になっていくと思う。
最後に
仕事が減ったのは、自分のせいではなかった。これは言い切っていいと思っている。
ただ、構造が変わったのに、こちらのやり方を変えていなかった。ここは自分の話だ。
窓口となる1枚のページは、自分で作ることもできる。もし手が止まってしまったら、そういうページを作る仕事もしているので声をかけてほしい。同じ50代で、同じところで詰まった人間として、必要なことだけ揃えたものを一緒に作る。
紹介が来るうちに、次の導線を作っておく。順番としては、これが正解なのだと思う。